アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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伊東豊雄 - 東日本大震災後の一年を考える
自然と人間の関係を密にする
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2011 東西アスファルト事業協同組合講演会

東日本大震災後の一年を考える

伊東 豊雄TOYO ITO


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自然と人間の関係を密にする

現代建築の最も難しいところは、一枚の壁によって外と内を分けて、できるだけ風を通さないことで均質で省エネルギーな環境をつくる、という思想の下につくられているところです。ですから、風を通すのが非常に難しい。しかし風を通すことは絶対に必要だと思います。最後にお話した「みんなの森 ぎふメディアコスモス」ですと、季節のよい時には窓を開け放って、空気をゆっくり循環させるということが省エネルギーに非常に効果的です。そうしたことがなかなか公共建築ではできません。

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」を考えるきっかけになったのは、昔ながらの日本家屋です。日本家屋は内と外を区切るのにたくさんのパーティションがあり、雨戸、ガラス戸、格子戸、障子、ふすま、欄間など、風が通っていく道をさまざまにコントロールしています。それに近いことを、コンピュータでコントロールすることで可能にできるのではないでしょうか。

そこで私は、最もプリミティブに、「大きな家」と「小さな家」というコンセプトで建築をつくることを提案しています。建築が一枚の壁で区切られるのではなく、少なくとも壁を二枚にします。「大きな家」に入っても、まだそこは「小さな家」の内部よりも少し外部の環境に近い。たとえば、図書館で言えば、「小さな家」は本を読むための空間として、外部と仕切られていなければいけないけれども、「大きな家」は本を探すための場所で、もう少し外部に近くてもよいのではないでしょうか。一枚の壁を二枚にするだけでも、少し風が通りそうな気がしてきます。それをさらに増やしてグラデーションをつくっていくと、今よりはずっと外部に近い環境が、壁の一枚目、二枚目の場所では生まれてくるわけです。

本当の意味で省エネルギーをやるなら、そういうことが必要だと私は思います。人間はすごく環境に適応する動物なので、少し外のような環境があれば、気持ちのよい時は必ずそこに行きます。新しい技術を使って、かつての木造の家のようなグラデーションを少し回復できないかと思っています。

今回の震災の、防潮堤の考え方も同じで、一枚の防潮堤で人間の住むところと海を隔てた結果が今回のような悲惨な結果になっているわけです。それをもっと多重な壁によって少しずつ防いでいく方が、自然になじむよい街ができて、かえって安全になると思います。

近代主義の思想はものを明快に切り分けていく思想です。けれども日本の元もとの思想はもっと曖昧にしていく思想でできていました。言葉もそうですが、日本語はすごく曖昧です。その曖昧さが多重な意味を生んでいるわけです。

さまざまなテクノロジーを駆使しながら、逆にもっと自然と人間の暮らしの関係を密にしていくことが、防災やエネルギーの面でも、これからの建築を考える上でヒントになるのではないでしょうか。それが私たちの最大のテーマです。

思想を変えていくということが、今、建築に一番必要なことだと思っています。

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