アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「ニコラス・G ・ハイエック センター(2007年)」は、銀座に建てたスウォッチグループジャパンの本社ビルとショールームです。国際コンペで一等を取って実現しました。やりたかったことは、銀座らしさと銀座にないものを取り入れることです。銀座らしさとは、大通りから一本道を入ると細い通りに小さな店が軒を連ねているような街の構成にあると思います。逆に銀座にないものは何かというと、それは緑です。あまりにも土地が高くて、公園やオープンスペースのような緑のある場所ができないのです。
ファサードをガラスのシャッターで覆い、四層ごとに大きな吹き抜けのレセプションやロビーの空間をつくりました。そこは機械空調に頼らずなるべく自然の空気を入れられるように、シャッターを開けると中と外が連続した屋外的な空間になるようにしました。また、銀座らしい通りの空間をつくるため、建物の1階をパッセージとして、シャッターが開くと中央通りから裏の通りへ通り抜けることができるようにしています。
スウォッチグループはスイスなどの有名な時計メーカーをいくつも買い取って傘下に置いているので、その中の8つのブランド(最終的には7つになりましたが)それぞれのショールームをつくる、というのがコンペで要求されたことでした。でもピルの間口が狭いので、要求通りにつくると銀座通りに面するのは一店舗のみとなってしまい、他の店舗は2階や3階、あるいは地下や奥に位置することとなり、商業的に不公平な状況になってしまいます。なので、なんとか8つの店舗すべてを通りに面させることができないかを考えました。そこで、一階のパッセージにすべてのブランドのショールームをつくることにしました。3メートルか4メートルの小さなガラスのショールームなのですが、必要なブランドの数を通りに沿って並べることができます。このガラスのショールームはエレベータにもなっていて、もっとそのブランドの時計を見たい場合には、そのままエレベータに乗って、時計を見ながら他の階にある各ブランドのショールームにアクセスできるのです。まったく施主の要求を無視してこのような提案をしたことが、勝因となりました。
五階のパブリックなロビーまでは誰でも自由に入れますし、時計を直したいと言えばその階にも入れますので、是非足を運んで見てほしいと思います。また、14階のイベントホールの天井はスチールパーを網状に組んでつくっています。ちょうど「ポンピドー・センター・メス(2010年)」という美術館のコンペに勝って木造の網状の屋根を設計している時でしたので、モックアップとしてここで実験させていただきました。