アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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坂 茂 - 作品づくりと社会貢献の両立をめざして
紙の力テドラル
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2012 東西アスファルト事業協同組合講演会

作品づくりと社会貢献の両立をめざして

坂 茂SHIGERU BAN


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紙の力テドラル

最後に、今ニュージーランドのクライストチャーチにつくっている「紙のカテドラル(2011年〜)についてお話します。3月11日に東日本大震災が起きたために、その20日前に起きたニュージーランドの大地震のことなど多くの方が忘れてしまっているかもしれませんが、富山県から留学していた学生がたくさんビルの下敷きになって亡くなりました。死者数だけで言えば日本の大震災の比ではないのですが、GDP比から見ると、実は経済的な影響はニュージーランドの方が大きかったのです。

僕も現地に呼ばれ、甚大な被害を受けた「クライストチャーチ大聖堂」の代わりとなるカテドラルをつくってほしいと言われました。皆で集まりコンサートを開けるような、パブリックに使われる仮設のホールを計画し、今建設が始まったところです。震災二周年となる2013年にオープンする予定です。

「紙のカテドラル」模型
「紙のカテドラル」模型。
模型の内観
模型の内観。

オリジナルの大聖堂の平面と立面のジオメトリーを解析しそれを受け継ぎ、同じ長さの紙管でA型フレームを組み、その角度を徐々に変化させることで、祭壇に向かって天井高さを高くし、空間に流動感をつくりました。紙管と紙管の間に隙間をつくり、そこから中に自然光が入ります。


建築家は特権階級のためのモニュメントをつくっていると言いましたが、僕も例外ではありません。教会というのはひとつの特権階級のための建築です。しかし、このカテドラルは公共性が強く、町の復興のシンボルとしての役割を持ちます。特権階級のための建築がいけないのではなくて、社会的な意味があれば、モニュメンタルなものでも、みんなが使って愛してくれる建築になるのです。仮設であってもボランティアででも、これからも人びとに愛される建築をつくり続けたいと思っています。

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