アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
2000年にドイツのハノーバーで万国博覧会がありました。その頃は世の中がエコロジーブームで、万博のテーマも環境でした。日本政府からリサイクル材でパビリオンをつくるように指命を受けて、「ハノーバー国際博覧会日本館(2000年)を設計しました。普通、建築というのは建物が建った時がゴールですが、僕は建物が解体される時をゴールに設定したのです。というのは、万博では各国が建物をつくりますが、半年後にはそれらを全部壊して捨てることになります。環境万博と言いながらも、実は大量の産業廃棄物を出す問題があるのです。そこで、建物を解体した後にほとんどの材料をリサイクルしたりリユースできるように、材料の仕様や工法を選択しました。あこがれのフライ・オットーさんと協働させていただいて、初の紙管のグリッド・シェル構造[注9]を設計しました。三次元結合[注10]を使い、平らに格子状に組んだ紙管を曲面シェルの形にゆっくりと変形させていく工法で、手動で少しずつジャッキアップできる仮設材のプロップを1,000本立てました。ひとつずつプロップにチャートをつけて、一日何ミリずつ上げていくかを計算し、毎日計算通り上がっているかを測量しなければなりませんでした。しかし、大きくて複雑な形なので地面からは測量できず、アンテナを10本立てて衛星からGPSを使ってチェックしました。
材料の紙管については地元の紙管屋さんに発注し、終わったら買い取ってもらってリサイクルしてもらいました。基礎に鉄筋コンクリートを使うと解体がやっかいですし、コンクリートはほとんどリサイクルできないので、木で箱をつくり、その中に砂袋を詰めて基礎としました。ジョイントにも防火性能が必要なので、シートべルトに使う布のテープを使っています。屋根の膜材は太陽工業と協力して、ドイツの基準に合う防火性能と防水性能を持つ、紙の膜材をつくりました。
[注9] グリッドに沿って曲面が形成されるシェル構造。
[注10] 部材同士の三次元的な変位を許容する結合方法。