アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
東北で避難所の間仕切りづくりの活動している時、宮城県の女川町長の安住宣孝さんにお会いして多層仮設住宅構想の話をしました。震災直後から新聞でも話題になっていましたが、沿岸地域には十分な平地がないので仮設住宅の十分な数がつくれない、でも奥地につくると不便なので住民が引っ越してくれない、というのです。明らかに多層化しないと十分な住宅数をつくれないと考えて、四月の段階で、コンテナを使った多層仮設住宅を各県に提案して登録しておきました。日本の行政は前例のないものはやりたがらないので、なかなかすぐにはつくらせてもらえないのですが、安住町長はとても実行力のある方で、「すぐにやろう」とおっしゃってくださいました。宮城県は県主導ではなく町の発注でもつくれるシステムでしたので、町長の英断でつくることになりました。
通常の仮設住宅は業者の人たちが大変な思いをしてつくっているのですが、やはり住棟間隔が狭く窓も十分に開けられず、さらには断熱性能も低く、隣の声が丸開こえという状態です。家族に合わせた標準の夕イプとして県で仮設住宅の面積は決められているので、僕らはその面積を有効に使って快適で使いやすいものをつくろうと考えました。野球場だった敷地に189世帯分の二階建てと三階建ての「女川町仮設住宅(2011年)」をつくりました。
海上輪送用のコンテナを市松模様に積み、狭いコンテナの中はユニットパスと子ども部屋だけをつくり、コンテナとコンテナの間の比較的広い空間をLDKとしました。基礎は鉄板を敷いてその上にコンテナを積んでいます。一般的な仮設住宅と向じ予算でつくらなくてはらず、十分な予算がなかったので、ボランティアの手で造り付けの収納家具もつくりました。テーブルは、坂本龍一さんが森を守る活動[注12]の一環で出る間伐材とルイヴィトン・ジャパンの寄付を使っています。紙管を脚に差すとテーブル、紙管を置くとちゃぶ台になるようにしています。無印良品もカーテンを提供してくれました。
積層させて敷地に余裕ができた分、住棟間隔を11メートルくらい確保でき、住民の要望で駐車場をつくったり、坂本龍一さんの寄付でマーケットをつくったり、コンテナを使った集会所や日本画家の千住博さんの寄付による「紙のアトリエ(2011年)」などの公共施設も設置することができました。
[注12] 2007年、坂本龍一をはじめ細野晴臣、高橋幸宏、中沢新一、桑原茂一の5名の発起人および各界から100名以上の賛同人を得て森林保全団体「more trees」を設立。国内外での森林整備、植林、森林保全の推進、仮設住宅の建設支援なども行っている。