アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
紙の構造の話に戻ります。1986年のアアルトの展覧会の会場構成で試行錯誤した後、1990年に小田原で市制50周年のイベント用の仮設の展示場「小田原パピリオン(1990年)を設計しました。この頃は松井源吾(1920〜1996年)先生にお願いして紙管の構造実験をしていたのですが、まだ建設大臣認定[注8]が取れていなくて主体構造として紙管は使えませんでした。そこで、四角い鉄骨柱で屋根を支え、紙管自体は鉛直荷重を負担せず単純に風の水平力を受けるだけの二次部材として使うことにしました。直径55センチ、長さ8メートル、厚さ15ミリの中空の紙管が、合計330本あります。内部は空調をするので、紙管と紙管の間にビニールの透明ホースを詰めてジョイン卜し、間を埋めながらも外の光を採り入れるようにしました。その中で、数本だけ直径120センチの太い紙管があって、この中はトイレになっています。なので、トイレットペーパーがなくなった時は中の壁をむしって使えるようになっています(笑)。
[注8] 旧建築基準法において、特殊な構造方法を用いた建築物や新しく開発された材料、設備などについては、国土交通大臣が認定(構造方法などの認定)する制度が設けられており、一般財団法人日本建築センター(BGI)が国土交通大臣から指定(登録)されて性能評価などの業務を行っていた。2000年の基準法改正に伴って廃止された。