アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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古谷 誠章 - LIVING WITH SURROUNDINGS
ごちゃ混ぜの空間で人やものと出会う
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LIVING WITH SURROUNDINGS

古谷 誠章NOBUAKI FURUYA


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ごちゃ混ぜの空間で人やものと出会う

これをきっかけに、自分自身がごちゃ混ぜの空間で人やものが出会うということがよいと感じていることを自覚しました。それから、学生たちと一緒に、ごちゃごちゃな空間についての研究を始めます。どうやらアジアにはたくさんありそうだということで、タイ・バンコクへ現地視察に行きました。その当時のマーブンクロン(MBK)センターというショッピングセンターの4階は、内部の売り場が実に混沌としていて面白かったです。女性用の下着を売っているかと思えば、時計やドライフルーツを売っていたり、かと思えば金の装飾品もある。とても生き生きと活気のある面白い空間で、長年の研究対象だったのですが、何年か前に行った時にはほとんどが似たような携帯電話屋になってしまっていて、とてもがっかりしました。

タイ・バンコクのマーブンクロン(MBK)センター。

タイ・バンコクのマーブンクロン(MBK)センター。

別の例として、タイのメークロン市場をご紹介します。アジアでよく見かけるごく普通のマーケットの風景なのですが、実は線路際にまで商品を広げていて、一日8本ここを通る電車が近付くと、線路際の売り台を引き寄せてテントを畳んで電車をやり過ごし、通り過ぎたらまた元のようにテントを広げるという市場なのです。これを20年前に現地で見て、鳥肌が立つほど面白いと思いました。仮に私が今、ある線路があって、電車が走ってない時は無駄だからその間マーケットとして使えばどうでしょうかと企画したら、病院に連れていかれてしまうかもしれません(笑)。それくらい、あり得ないことが起っているのです。今ではすっかり観光名所になっています。

タイのメークロン市場。

タイのメークロン市場。

世の中には二種類の空間があり、ひとつはきちんと計画されマスタープランに則った空間で、もうひとつは知らず知らずのうちに長い年月を経てでき上がってしまった空間だと思います。私はその後者の方に俄然興味を惹かれているのですが、しかし、20世紀にマスタープランの重要さをさんざん頭に叩き込まれています。このマスタープランというものがまたなかなか曲者で、長年かけてようやく完成したと思ったらもう周りの様子はだいぶ変わってしまい、もう必要なくなった、というようなこともたくさんあるわけです。つまり、固定的に街や建築の将来像を描くということは難しいことなのです。先ほどの「せんだいメディアテーク」の話はもう20年以上前で、当時携帯電話はありましたが、インターネットに接続するiモードはありませんでした。そんな頃に、将来のメディアテークを想像しなければなりませんでした。これから何十年も使われることになるでしょうが、30年、50年先の未来を正確に想像することは不可能ですし、それを半端な想像で進めてしまうことは危ないと思うのです。つまり、なんとなくでき上がっているものを許さない限り、状況が常に変化していくダイナミックな現実には対応できなくて、将来変転していくものを受け入れ、可能にしていく空間の素地のようなものをつくることが必要なのだと思います。

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