アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「高崎市立桜山小学校」全景。
「茅野市民館」、「小布施町立図書館『まちとしょテラソ』」の後に当選したのが「高崎市立桜山小学校(2009年)」です。既存の小学校の児童数が急増したため、学区を分けて分離新設した学校です。近年、少子化で家庭の中での兄弟姉妹の数が少なくなってきています。また、年齢の違う子どもたちが一緒になって遊ぶということも少なくなりました。全員が同い年の子どもだけで同じ教室で勉強をして、競争して、それがずっと就職先まで続いていくのが今の日本の教育です。しかし、そこから教わることは、同じ物差しの中で一点でも高く点を取るということくらいで、多様な個性は育ちにくい仕組みだと思います。また、異年齢の子どもたちが刺激し合うことが少ない。ですが、おおよそ人間の文化というものは、年齢の異なるさまざまな人たちが一緒に出会っているからこそ伝承されたり、イノベートされたりするものですよね。
「高崎市立桜山小学校」2 階教室とオープンスペースを見る。
「高崎市立桜山小学校」2 階から交差する大階段を見る。
そこで考えたのは、学校は子どもたちが毎日違う年齢のお兄さんやお姉さん、弟や妹と出会う場所であるということです。そのためには、むやみと仕切りがない方がよい。家庭の中での兄弟姉妹は少なくても、学校へ来れば毎日のように多くの兄弟姉妹に会うことができると考えると、教室以外の場所、たとえば階段や廊下が出会いの場所になるわけで、そうするとただ通行できればよいのではなく、そこでも何か出来事が起こるような居場所にしなければいけないと思いました。すべての教室をオープンタイプとして、廊下との境には可動の家具を設けることで緩やかに繋ぎ、それらの教室をジグザグとオープンスペースで繋げた構成としました。オープンタイプの教室の場合、吸音が問題になりますが、ここでは教室の対面の壁を吸音性能を考慮した木組壁としています。この壁を使って、子どもたちは自分たちのつくった作品などを自由にディスプレイすることができ、またお互いにそれらを見て回れるようになっています。
「高崎市立桜山小学校」2 階平面
「高崎市立桜山小学校」1 階平面
冒頭にお見せした沖縄の猫と同様に、子どもたちは居心地のよい場所を見つける名人ですから、学校中あちこちに私たちが思いも寄らなかった場所を見付けては、出会いの空間として活用してくれています。「高崎市立桜山小学校」をつくって、思いがけず嬉しかったことは、この学校には10人の不登校の子どもたちがいたはずでしたが、4月には登校し、翌日から全員が通うようになったということでした。普通の学校では、教室で居たたまれなくなった子は保健室ヘ行き、保健室も辛くなると学校へ行かなくなる、というように不登校になってしまうようですが、この「高崎市立桜山小学校」では、教室から保健室までにさまざまな段階の場所があって、その時に自分に合った居心地のよい場所を見つけ、落ち着いたらまた戻っていく、ということができるので、もしかしたらそういう部分が功を奏したのかもしれません。子どもたちにとって、学校は一日の長い時間を過ごす生活の空間ですから、教室と廊下があればよいわけでなく、ひとつの住まいなのだと思いました。