アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
隈 研吾 - 小さな建築
ちょっ蔵広場
2022
2021
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

2012 東西アスファルト事業協同組合講演会

小さな建築

隈 研吾KENGO KUMA


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
ちょっ蔵広場

次は、大谷石をテーマにした「ちょっ蔵広場(2006年)」です。

大谷石という石もまたおもしろい素材で、ライトが来日した際にこの大谷石と出会い、非常に気に入って、旧「帝国ホテル(1923年)」に使います。大谷石は汚れやすい石ですから、周りの人間はこんな高級ホテルに汚い石を使うなんて、と反対していましたが、ライトは聞かずに大谷石を使いました。またタイルには、溝の入っているスクラッチタイルを使っています。ライトは、石やタイルでも、穴がたくさん空いていて柔らかい、小さなスケールを感じさせる素材を好んで使ったのですね。

東京大学の本郷キャンパスの建物に使われているタイルもスクラッチタイルです。これらの建物は、だいたい関東大震災後4〜5年の間にすべてが建てられました。設計されたのは内田祥三(1885〜1972年)先生で、そのスクラッチタイルを使った理由がとてもしゃれています。当時戦災直後で、タイルの工場がのきなみやられてしまい、そんな中タイル張りの建物を建てるには、戦火を免れた小さな工場からタイルを集めてこなければならなくなったことです。こうなると、どうしてもタイルの色が全体として揃わないので、そこに小さな溝を入れてやると、いろいろな色が混ざっているのが施工不良には見えず、ちゃんとしたハーモニーを持ったデザインとして見えたと言うのです。

「ちょっ蔵広場」では、ライトの好んだ大谷石を、ライトよりさらに小さく使おうと考えました。この小ささを実現したのは、鉄板と石との組み合わせです。少し専門的にお話しますと、鉄板をテンション材として、石をコンプレッション材として使用し、ひとつひとつ積み上げてつくりました。石と鉄というそれぞれの部材の、長所や特質を最大限に生かして、この形が生まれたのです。

「ちょっ蔵広場」全景
「ちょっ蔵広場」全景。
「ちょっ蔵広場」石と鉄の組み上げ方のダイアグラム
「ちょっ蔵広場」石と鉄の組み上げ方のダイアグラム。

«前のページへ最初のページへ次のページへ»