アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
次は、大谷石をテーマにした「ちょっ蔵広場(2006年)」です。
大谷石という石もまたおもしろい素材で、ライトが来日した際にこの大谷石と出会い、非常に気に入って、旧「帝国ホテル(1923年)」に使います。大谷石は汚れやすい石ですから、周りの人間はこんな高級ホテルに汚い石を使うなんて、と反対していましたが、ライトは聞かずに大谷石を使いました。またタイルには、溝の入っているスクラッチタイルを使っています。ライトは、石やタイルでも、穴がたくさん空いていて柔らかい、小さなスケールを感じさせる素材を好んで使ったのですね。
東京大学の本郷キャンパスの建物に使われているタイルもスクラッチタイルです。これらの建物は、だいたい関東大震災後4〜5年の間にすべてが建てられました。設計されたのは内田祥三(1885〜1972年)先生で、そのスクラッチタイルを使った理由がとてもしゃれています。当時戦災直後で、タイルの工場がのきなみやられてしまい、そんな中タイル張りの建物を建てるには、戦火を免れた小さな工場からタイルを集めてこなければならなくなったことです。こうなると、どうしてもタイルの色が全体として揃わないので、そこに小さな溝を入れてやると、いろいろな色が混ざっているのが施工不良には見えず、ちゃんとしたハーモニーを持ったデザインとして見えたと言うのです。
「ちょっ蔵広場」では、ライトの好んだ大谷石を、ライトよりさらに小さく使おうと考えました。この小ささを実現したのは、鉄板と石との組み合わせです。少し専門的にお話しますと、鉄板をテンション材として、石をコンプレッション材として使用し、ひとつひとつ積み上げてつくりました。石と鉄というそれぞれの部材の、長所や特質を最大限に生かして、この形が生まれたのです。