アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「V&A at Dundee(2010年〜)」は、ピクトリアアルバート美術館のダンディー分館のプロジェクトで、スコットランドの崖からデザインの着想を得ています。
今日の大事な主題のひとつである「粒」についてお話したいと思います。自然には「粒」があり、それによって、生物や動物は自然の中で自分が自然とどういう距離を取っているか、どちらに向かって走っているか、といったこと理解しているのです。「粒」のおかげで自分が環境と繋がることができるのですね。そのことを教えてくださったのは、アフォーダンスという認知科学を専門とされている東京大学の佐々木正人先生です。佐々木先生の理論は、私がやろうとしていることをうまく説明してくれています。世界は、「粒」の集合体であり、生物には「粒」があるので環境に適合することができる。だから、世界がすべて打ち放しコンクリートだったら生物は世界に適合できない、ということなのですね(笑)。それから、その佐々木先生と私との対談をまとめたテキストが、『対談集つなぐ建築』(隈 研吾著、岩波書店、2012年)として出版されています。佐々木先生以外にも、興味深い思想家との対談が収録されていますので是非ご覧ください。
「V&A at Dundee(2010年〜)」でスコットランドの崖のような建築をつくろうと思ったのも、その自然の崖に「粒」があるからです。敷地は、テイ川沿いのクレイグハーバーです。スコットランド政府が、「ビルバオ・グッゲンハイム美術館(1997年、設計:フランク・O・ゲーリー)」みたいな地域振興の核となる美術館をつくりたいと、コンペティションを行いました。
材料にはプレキャスト・コンクリートを用いて、それらを「粒」として積み重ねて全体を構成しています。中央には「プザンソン芸術文化センター」と同じようなボイドがあり、そこで川と街が繋がる構成としています。このひとつひとつのプレキャスト・コンクリートは、隙間が空いていて向こうが見えたり、劇場の客席となって人が座れるようになっていて、「小ささ」を生かしています。