アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「Chidori(2007年)」は、2007年のミラノ・サローネでイタリアのスフォルツォルコ城の中庭につくったパビリオンです。展示期間一週間のパビリオンなので、材料は日本から持ってくることのできる軽くて小さいものにしたいと考えていたら、ひとつの玩具に出会いました。それは、「千鳥」という飛騨高山に昔からある組み木のような木製の玩具で、飛騨高山の街ではビニールの袋に入って500円くらいで売っているものなのですが、これがとてもよくできている。切り欠きが施されている三種類の木の棒を組んでひねると、釘がなくとも固定される立体的な積み木なのです。
このシステムを用いて、ミラノにドーム状のパピリオンをつくりました。ひとつの部材は3センチ角の木の棒で、切り欠かれて残る部分は1センチくらいしかありませんから、非常に細い。不安になるくらい細い部材ですが、組み合うことによって強くなるのですね。構造は佐藤淳さんにお願いしたのですが、彼が絶対大丈夫だと言ってくれました。現地に学生を連れていき、日本から持ってきた部材を一気に組み立てました。解体するのも簡単な、ノマド的建築です。
こういった小さなものから構成されている建築は、つくるのも元に戻すのも簡単にできます。日本の木造建築は、そもそもそういう小さいシステムでつくられていたと、私の先生である内田祥哉先生はおっしゃっています。「日本の木造建築では、柱はいちおう構造として建っているが、間取りを動かしたい時には柱すらちょっとずらしちゃう。それは、小さいエレメントの複合体として全体がつくられているからで、完成した後から柱を動かせるシステムなんて、世界に他にないよ」というのが、内田先生の持論です。